読了

 興亡の世界史2 スキタイと匈奴 遊牧の文明 林俊雄

古今東西悪役かつ野蛮人として見られることの多かった遊牧民族。初期の代表であるスキタイと匈奴にスポットを当てたのが本書です。何故に代表かと言うと、それなりに勢力を誇ったと言うことも勿論あるのですが、やはりビッグネームの歴史家に取り上げてもらったことも大きいです。スキタイを描いたのがヘロドトス。そして匈奴を記したのが司馬遷(と班固)です。この二人がいなかったらそんなに知られることもなかったのでは?
 とは言えヘロドトスもそんなに詳しくは書いていないです。ですからスキタイについては謎に包まれています。一方匈奴の方は割と詳しく書いてくれています。ある程度の社会構造も分っています。中国の歴代の王朝は北にいる遊牧民族には頭が上がらない時代が殆どです。前漢武帝と明の永楽帝くらいでしょうか、一時的にせよ押し返したのは。殆どは経済援助を行っての懐柔策をとり続けます。まぁ軍事作戦を行うよりも遥かに安上がりなわけで、そちらの方が賢い選択ではある訳です。
 昔世界史の教科書では匈奴が西方に移動してフン族としてヨーロッパに現れ、民族大移動を引き起こして西ローマを滅亡に追い込んだとの説明がされていました。本書ではこの説について検証しています。結論から言うとよく分からないと言うことのようです。何しろ物証に乏しく断定的なことは言えないようです。特にフン族のヨーロッパでの活動期間が短く、フン族のものと断定出来る墳墓が発見されていないため匈奴との連続性についてもあれこれ言えないとのことでした。と言うことは早くアッチラの墓を探さなきゃいけないってことですね。

スキタイと匈奴 遊牧の文明 (興亡の世界史)

スキタイと匈奴 遊牧の文明 (興亡の世界史)