読了

 東インド会社とアジアの海 羽田正著
 講談社の興亡の世界史シリーズの最新刊です。17世紀に始り19世紀には姿を消した西欧各国の東インド会社の興亡を鳥瞰していて、興味深く読めます。そもそも15世紀末にバスコダガマがゴアに到達した時から西欧のインド貿易が始るのですが,当時のヨーロッパにはまともな特産品がありませんでした。ガマがインドに持ち込んだ商品もそのあまりの貧弱さに現地の商人達から笑い者にされてしまいます。その事をよほど根に持っていたのか、ガマは二度目に訪れた時には商品ではなく大砲を持って来て、前回の仕返しに港を攻撃して海賊行為を働いて引揚げました。酷い奴です。
 西欧に特産品が無い事はその後も変わりません。何故に貿易が出来たかと言うとメキシコの銀があったからですね。それでインドの綿製品や中国のお茶等を買っていたのです。一部の武器や工芸品を除いた西欧の産品が売れだしたのは19世紀以降、産業革命が起きてアメリカ産の綿花を使った綿織物が安く大量生産される様になって以降のことです。自由貿易を求める新興の資本家層にとって、貿易を独占する東インド会社は時代遅れのものとなっていたのです。
 この講談社のシリーズはずっと読んでいますが,その中でも一二を争う面白さですね、この本は。

東インド会社とアジアの海 (興亡の世界史)

東インド会社とアジアの海 (興亡の世界史)