VY Aqr顛末記

1994年以来12年間増光の無かったVY Aqr。かつては再発新星かと思われていたこの星ですが、今はUG型の中でも特に増光頻度の少ないUGWZに分類されています。
 始まりは10月7日の事でした。埼玉県にお住まいの若き変光星観測者前原裕之さんがCCDによる自動観測中増光を発見されました。19:16(JST 以下全て同じ)にオーストラリアのスタビングスさんが観測した時には13.0等以下だったものを22:31に12.46等で検出されています。増光の早い段階での貴重な発見です。一歩遅れて佐世保の森山雅行さんが24:08に確認されています。しかし日本では西に沈んでしまい、それ以上の追跡は不可能です。次はヨーロッパ勢の出番。27時頃になると相次いでヨーロッパ勢による確認&追跡観測が行われました。既に11等台前半まで増光しています。僅か5時間で1等級以上の増光で期待が高まります。28〜29時台にはイギリスのポイナーさんによって11.1等で観測される等、この頃極大に達した模様です。その後はAAVSOのアメリカ勢にバトンをタッチして追跡が行われ、ゆっくりと減光する様子が捉えられています。そして地球が一周して再び日本勢・オーストラリア勢に回ってきます。8日の夕方で11等台半ば。私は20:33に11.8等で目測し、この時が今回の増光の初観測でした。UGWZ型と言う事でスーパーアウトバーストかと期待されていましたが、どうもノーマルっぽいとの感触です。しかし研究者からはプレカーサーからスーパーアウトバーストに移行する可能性の指摘もあり監視の継続が要請されます。しかしその後も減光はとまらず、翌9日には12等台。10日には14等台。そして11日には16等台と順調に減光を続けたのです。私も9日に12.4等で目測したのが最後。
 結果的にどうやら今回はノーマルアウトバーストだったようです。しかし12年ぶりの増光ですっかり興奮させてもらった数日間でした。12年も増光しなかったくせにノーマルだったと言う事はまた近いうちに*1増光するかもしれません。それか太陽に近づいた頃に人知れずスーパーを起こしていたのかもしれません。
 このように地球上に散らばる観測者のネットワークが今回のような貴重な現象の追跡に大きな威力が発揮される訳です。及ばずながら私もその一端を担う事が出来ました。観測のやり甲斐もあろうかと言う物です。また何時このような事があるか分りません。その時に備えて監視を続ける事にしましょう。

*1:来年あたりとか