変光星観測者会議潜入ルポ

 10日、11日に熊本市に於いて全国からおよそ2,200名(?)もの参加者が詰めかけ、大盛況のうちに開催されました。
研究発表5本
10日
€ パラグアイの天文状況 籾山隆志
  短周期食連星 WW Eri の観測 永井和男
¡ Recurrent Nova の「発見」:祝RS Oph増光 佐久間精一

11日
¤ 矮新星ASAS023322-1047.0とASAS102522-1542.4の測光観測 前原裕之
¦ 新星のyバンド測光 清田誠一郎

※招待講演(10日)
新星・超新星の近年の動向 九州大学 山岡均先生

 研究発表それぞれが大変興味深いものでした。
 €の籾山さんの発表は同氏がJICAのシニアボランティアとして派遣されたパラグアイの唯一の天文台であるアスンシオン国立大学天文台での活動報告でした。この天文台は日本の無償援助で出来た天文台です。籾山さんは2代目のシニアボランティアとして派遣され、同国の変光星を中心とした天文研究と現地専門家(パートタイマー!)と協力しての天文教育にご尽力されました。これを聞きながら日本が明治になり諸外国からお雇い外国人から貪欲に知識を吸収し発展の礎を築いた事にも思いを馳せ、パラグアイの天文事情の発展を願わずにいられませんでした。なお、籾山さんの後任はまだ募集中との事です。我こそはと思う方は是非JICAにご応募くださいな。
 は素性のよく分からない短周期食連星 WW Eriの観測から光度曲線を描き、さらにお互いにくっついている星の形(ロッシュローブ)を推測すると言うものです。さすが食変光星の大家永井さんです。よくそんなものがわかるなぁと言うのが素人の感想。
¡は今回の再発新星RS Ophの増光を記念し、変光星観測の大先輩である佐久間精一さんが過去矮新星と一緒くたにされていた再発新星が矮新星ではなく新星である事が明らかにされて行く経緯などをご説明頂きました。そしてその内増光するであろうそれらの星を監視するようハッパをかけておられました。(^^;)
¤はCCD組の第一人者である前原さんによる、今年1月相次いでASASが発見した天体の観測から、これらの星が矮新星、しかもUGSU又はUGWZである事を明らかにしたもの。流石ですね。
¦は同じくCCD組の第一人者清田さんによる新星観測の報告。白色矮星と普通の星の連星である新星の主星の方の光球の明るさを直接測る為に提唱されたyバンドフィルターを用いた新星観測の報告。理論から予測された光度曲線と比べ実際の光度曲線が違った振る舞いを示していると言う面白い(?)結果になっているとの事。しかし詳しく調べるには望遠鏡の口径が足りないと言う難しい問題も発生!?
10日に行われた九州大学の山岡先生による新星、超新星の近年の動向と題する講演も行われました。近年の自動望遠鏡による捜天観測により壊滅的に打撃を受けるかと思われていたアマチュアによる新天体発見が蓋を開けてみると実は大して影響がないこと。また日本天文学会でもアマチュアのモチベーションを維持するべくこれまで受賞対象にならなかった再発新星の第一回目の再発増光の発見を初め様々な功績を表彰する事にしたとの事です。また突発事象の早期発見が天文学上重要な知見を得る事に寄与した例としてGRBの残光の観測をあげておられました。特に2003年に当時京都大学におられた植村誠氏が検出された異様に明るいGRB残光が銀河系近傍の*1超新星に由来するものである事が明らかになった経緯を紹介されました。この観測の事は以前どっかで読んだ事はあったものの何の事かよく分からなかったのですが、今回の話を聞き、実は大したものだったんだなぁと認識を新たにした次第です。これで今年のノーベル賞候補は間違い無いと言うことでしょうか。

 また変光星この一年と題し前原さんにより過去一年ちょっとの変光星業界のトピックスを振り返りました。かなり分野的に偏りがありますが(^^;)、自分でもすっかり忘れている私の観測なんかも取り上げられたりしてすっかり浦島太郎状態です *2

 まぁ会議自体はこんなところでしたが、本当に濃い話は懇親会の中だった事は言うまでもないでしょう。そうそう、お土産に変光星星図集のCDを頂きました。日本変光星研究会の土山さん、内藤さんの御尽力で平沢星図をスキャンしてまとめたものです。以前から少しずつ利用出来るようになったものが今回の会議に合わせて完成させたものとの事です。使い易い星図なので大助かりです。こりゃ表彰状ものですよ。

*1:と言っても20億光年

*2:違うって