一人称

 を「僕」と言う女子高校生が主人公の小説が今年のセンター試験の国語の問題に使われていた。松村なんとかと言う人の作品。おそらくちょっとレベルの高い女子校の話。文芸部に所属する主人公の回りには自分のことを「僕」と呼ぶ女子高生が溢れている。普通女子高生なら一人称は「わたし」或いは「あたし」かな。実際文芸部以外の生徒達はそう言っている。なぜ文芸部の生徒達が「僕」という一人称を使うのか?
 彼女等は日頃サリンジャーがどうのカフカがこうのと文芸論を闘わせている。そうした論争に於いて相手より優位に立つ事を望んでいる。そしてその優位さを得る為には「女性」性が邪魔をすると考えている。その為には中性的な立場に自らを置おかねばならず、その手段として一人称に「僕」を使うのだ。また「僕」と呼ぶ事により自己を第三者の視点から捉える事にもなる。本人は他者に対し高見に立ちたい、或は立ったと思っている。しかしそれは根拠のないものでしかない。それは本人が一番良く分かってる。だから敢えて他人と距離をとり、また自分からも距離をとることによりその不安から逃れようとしている・・・・。
 とまぁ、そんな風な事を考えながら問題を解いていたのだけれど、勿論出題者の意図とは違うだろうから自分の考えで回答してはいけない。あくまで出題者が喜びそうな答じゃないと。これは商売でも同じ。相手が何を望んでいるかを察しないといけない。世の中そんなもん。