食変光星観測のすゝめ

準備編

変光星って?

 変光星観測には様々な分野が有る訳ですが、その中の一つで直ぐに結果の出せるものの一つに食変光星の観測が有ります。食変光星とは近接連星で、その公転面が地球の方を向いている為にお互いの星が隠れる時に減光して見えると言うものです。周期数十年と言うε Aurみたいなのも有るには有りますが、一日とか数日のものが圧倒的に多いです。変化の早い星では5分置きくらいにみてもその変化が分ります。そんな食変光星を眼視で観測してみましょう。
 食変光星にもいくつかタイプが有ります。通常は一定光度が続き、食の時だけ減光するアルゴル型(EA型)、星同士が接近して相手の星を照らしており、その状態の変化等により連続的に変光するβ Lyr型(EB)、星同士が接触していて平常光度が無く常に変光していて、主極小も副極小も同じように減光するW UMa型(EW)等です。

観測して何が分るの?

 詳しい観測には光電測光とかCCD観測とかが行われています。アマチュアでもCCD観測されている方は多いです。CCDだと見事な光度曲線が描けますし、フィルターを付けて多色測光することにより様々な事が分析出来ます。眼視観測ではその精度はせいぜい0.1等あるいはもうちょっとです。ですから主な目的は極小時間の決定に有ります。予報とどれ位差があるかを調べるのです。そしてそれが長い年月の間にどれ位変化するかを追って行くのです。

機材は何が良いの?

 使用する機材は、まぁ何でも良いです。明るいアルゴルは肉眼で十分ですし、3センチとか5センチとかの双眼鏡で対象になるものも沢山有ります。私は8等以上なら3cm又は5cm双眼鏡、8〜10等位が10cm双眼鏡、それ以下が12cm望遠鏡と言う使い分けです。但し、気分次第で変わります。(^^;)
 何しろ何でも良いです。双眼鏡は手持ちでも良いのですが、三脚に固定した方が何かと便利です。勿論手持ちでも構いませんが、数分置きに見るので放っておいても良いので楽ですから。(^^)

先ずは予報を調べなきゃ

 観測する為には先ず予報を調べなければいけません。EBやEWは常に変光しているのでまだ良いのですが、EAの場合は食以外の期間は一定光度です。予報は計算すれば良いのですが、私のようにそんなのめんどくせー、あるいはそんなのできねーよ、と言う人には便利なサイトが有ります。まず、日本変光星研究会の永井さんがKrakow星表を元に予報を算出しておられて、大変便利です。また明るい食変光星については同じく永井さんがMLやご自身のブログでも「明るい食変光星の極小予報」として予報を纏められており、こちらも大変便利です。またクラコウ天文台自身の予報のサイトもあって、星ごとの予報も調べられてこちらも便利です。私はもっぱら永井さんの明るい星の予報を見て、その日に極小が来る星を調べ、適当な星が無い時は月別の予報から適当な星を選ぶと言う順番で選んでいます。

星図が要るよ。

 その日に観測する星が決まったら星図を準備しなければいけません。この場合必要なのは導入用の星図と比較星が記入された変光星図です。導入用は明るい星からホッピング出来るようスタートになる星と目的の変光星或は同視野にある目印の星が分れば何でも良いです。自動導入するなら要りませんね。
 比較星の入った変光星図はAAVSOのVariable Star Plotter日本変光星研究会の変光星図一覧、それに永井さんのサイト等から探します。無い時には別に作らなければいけません。私は星図ソフトの「The sky」で作っています。比較星には赤い星は避けておきます。B等級とV等級の差が1.0以内のものを選ぶようにしています。双眼鏡や低倍率の望遠鏡なら比較星に困る事は有りません。

で、どんな星を選ぶのよ?

 観測する星は使用する機材や観測する時間により適当なものを選びます。具体的には変光範囲が大きければ大抵良いのですが、注意する点として食の継続時間があります。つまり同じ1.0等の変光範囲の星でも継続時間が5時間と10時間では変光速度も倍違います。一晩中観測するのなら良いでしょうが、通常数時間程度でしょうから継続時間が短い方がやりやすいです。変光範囲が0.5等になっているからと勇んで観測してみたものの、数時間の観測で0.1等とか0.2等しか変光してくれないと哀しいものが有ります。継続時間は永井さんが「明るい食変光星の極小予報」に載せておられます。