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ダイヤモンド号で行く地底旅行 入船徹男

 著者は愛媛大学の地球深部ダイナミクスセンターの所長です。地底旅行に題材を取って一般向けに地球の内部構造とそのダイナミクスさを紹介したものです。地底旅行に使うダイヤモンド号はその名の通りダイヤモンドで出来た乗り物です。何しろ地球の内部は圧力が高いですから固い物でなければならないのです。乗り物と言っても動力を持っている訳ではありません。海洋プレートの沈み込みやマントル対流に乗って流されると言うなんとも他力本願な乗り物です。旅行日程も2億年ですので忙しい現代人にはちょっと向かないかもしれませんけど。
 地底の入り口はプレートが沈み込んでいる深海の海溝です。取りあえずそこに乗っていれば地殻を抜け、マントルに入り地下660キロ付近にある近くのたまり場(スラブ)まで行きます。マントルと言うと石です。真っ暗な世界かと思いますが、そうでは無いようです。マントルを作るかんらん岩はかんらん石や輝石それにざくろ石等の鉱物から出来ています。またダイヤモンドも大量に有るはずです。そして地底では圧力とともに温度も上がっています。そのため輻射光に満ちています。光り輝く宝石の世界なのです。すげー。一端上部マントルと下部マントルの境に逗留した後は崩落していくそのスラブに乗って年速数センチの速度でマントルの最底部まで行けるのです。マントルの次は核です。核は外核内核に分かれています。外核は溶けた鉄の海。時速10メートルもの速さで対流しています。これが地磁気の源ですよね。そして内核は個体の鉄です。地球は誕生以来冷え続けている為中心核の鉄も冷えて個体になっているのです。これが掘り出せたら鉄資源に困ることは無いでしょうね。
 さて地上に帰るにはどのようにすれば良いのでしょう。一旦マントルの底部まで出てくれば巨大な上昇流が有ることが分っています。スーパープリュームです。これに乗れば一気に地上へ帰れます。しかも地表近くになると圧力が下がって融点が下がり岩石がマグマとなって爆発的に地上へ吹き出すのです。地上へ出たら再びプレートに乗って日本まで帰れば良いのです。
 ところが昔日本が有った位置に日本は有りません。大陸に飲み込まれて大きな大陸*1の一部になっています。私たちを覚えている人はおろか人類もいません。困りました。まぁ日本には浦島太郎と言う先輩も居ることですし気にしないことにしましょう。
 

ダイヤモンド号で行く地底旅行

ダイヤモンド号で行く地底旅行

*1:2億年後に誕生すると予想されている超大陸アメイジア